「単語を覚えまくったら、ある程度英文が読めるようになったけど、点数がそこそこまでしかいかない」
という人が結構多いです。
そして、そのように相談されたときに「ある程度読める」というのが、実は単語の拾い読みをしてしまっているだけ、というケースがかなりあります。
そんな状態を解消し、本格的な読解へと繋げてくれるのが今回の「入門英文問題精講(4訂版)」です。 結論から言うと、非常に名作です。
本書の概要
この参考書は、旺文社から出ている「問題精講シリーズ」の一つで、英語だけでなく、理科や数学なども良書が非常に多いシリーズです。
問題精講シリーズは、基本的に「入門」「基礎」「標準」とレベル別に構成されていて、英語ではそれぞれのレベルで「英文法」「英文」「長文」「英作文」と分かれています。
今回の参考書は、「入門」の「英文」問題精講ということになります。4訂版として2019年7月に大きく改訂されたものです。
ちなみに「問題精講シリーズ」の傾向として、それぞれの名称よりもワンランク難しい、というのが(私見ですが概ね賛同してくれる人が多いはず)ありますので入門でも殆どの人に役立ちます。
本書の目的
英文を正確に読む!
まさにこれにつきます。
筆者の説明でも言っているように、最近では「なんとなく適当に読めればいい」という風潮があり、結局読めていないという状態になっている人が多いです。
公式の紹介映像でも紹介されていた例文で、あくまで極端な例ですが、例えば「Can can can cans.」 という文があったとして、「なんとなく単語を拾って」意味が取れるでしょうか?
おそらく取れない人が多いのではないでしょうか。例えば以下のように読めます。
最後に「?」が無いので疑問文ではない
→つまり最初のCanは主語になる(Canという人かモノ)
→そうすると次のcanは語順的に助動詞
→そうするとその次は述語動詞の「カンに詰める」
→その動詞は他動詞なので最後のcansは目的語「カン」
全体では、「キャンさんは、カンを缶詰めにすることができる。」という意味になります。
これはもちろん一般的な英文ではなく極端な例文ですが、このような正確な文法理解がなければ正確に読み取れないという文が、実際の入試でも出てきます。
それができるようになるための力を着実につけていくという参考書です。
このようなジャンルを「英文解釈」とか「構文」というのですが、呼び方は出版社や予備校によって異なります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
おすすめポイント
品詞の説明を重視!
この手の英文解釈本は、文法事項は固まっている前提で作られていることが多いので、基本的にはいきなり英文解釈部分から開始していくのですが、本書ではそれぞれの品詞の説明に結構なページを割いています。
例えば「名詞とは」「動詞とは」というように品詞の説明がそれぞれ1ページずつあります。
「different, difference, differ, differenciate, differentiation」と並べると品詞の違いに自信がないという人や、「surprise」と聞いて「驚く」とざっくり覚えている人には特に役立つはずです。
導入部分の映像講義つき
先ほど書いた品詞などの重要な導入部分が、著者の竹岡広信先生ご本人による解説映像で見られるようになっています。この部分だけでも品詞の重要性を理解するにはかなり役立ちます。
(その最初の部分がYouTubeで公開されています)
問題と解説の別冊構成
これは好みの問題もありますが、英文解釈の参考書は、何度も回して、自分で意味が取れるかどうかをやりこむことが重要なので、問題文のみを別冊にできるのは良いと思います。
解説を見ながら1周終わった後は、問題文だけを見て、文構造を正確に取れているかを確認しましょう。
本書のレベルとおすすめ対象者
「問題精講シリーズ」あるある
あくまで個人の意見ですが、このシリーズは、「入門」というのが基礎~普通レベルで、「基礎」が普通~上位レベルで、「標準」は上位~激ムズレベルであることが多いです。名称よりも一つ上、という感じで大体合っています。
本書も、「入門」ではありますが、「本当に全く英文が読めない」という人や、「文法も殆どやってない」という人にはおすすめしません。
そういう場合は、「いちばんはじめの英文法(超基礎文法編)」などを終わらせてから取り組むと良いです。
おすすめの対象者
・単語や文法はある程度固めている
・文もなんとなく読めている(センターや共通テストの模試で80点~130点ぐらい)
・「基礎英文問題精講」、「基礎英文解釈の技術100」、「ポレポレ」などを見てみたが、難しい
・読むときに品詞なんて考えたことがなかった
という人にはおすすめです。この参考書をやりこめば、共通テストや中堅大などの入試基礎レベルには十分対応できます。
「基本はここだ!」(紹介記事)などの、さらに基礎的な英文解釈の本を終わらせた後にも最適です。
本書をマスターして更に上のレベルを目指す人は、「基礎英文問題精講」、「基礎英文解釈の技術100」、「ポレポレ」(紹介記事)などに取り組んでみましょう。
そして、入試に向けて本書レベルの長文に取り組みたい人は、同シリーズの以下の参考書をおすすめします!
まとめ
英文解釈の参考書は多いのですが、本書は特に品詞の重要性を説き、さらにその解説を丁寧に入れている点が素晴らしいです。
本来は、その説明は別途文法の参考書等で終わらせているべきではありますが、おそらく、これまでそれをすっ飛ばしてきた人にも、その重要性を必ず理解させてから取り組んでほしい、という著者の信念ではないかと思います。
それに従って、基本事項から丁寧に取り組んでいけば、必ず力が付きます。その後は長文をどんどん読んでいく訓練を積んでいきましょう。
ちなみに、本書の著者である竹岡先生の授業は「学研プライム」という映像サービスで受けることができます。
とりあえず無料登録でも1回分試しに見ることができるので、興味のある人は見てみましょう。